吉澤 宏一 (独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター)
吉澤 宏一
独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター
平成29年10月30日~平成29年12月1日
(医療法人医理会 柿添病院)

地域医療と聞いて、こちらに来させて頂く前は夜間にCT/MRIが撮れるのだろうか、医師数が限られていて、自分の専門分野外の疾患はどうしているのだろうかという漠然とした疑問があり、何となく大病院ほどに先進的ではないイメージがありました。

しかし、いざこちらで研修させて頂くとそのイメージは大きく違っていたことに気づかされました。医師をはじめとして、看護師、技師、ST/PT/OT、事務の方々など、全ての人が一致団結して医療にあたっており、限りある医療資源の中で最良の医療を提供するべくとてもエネルギッシュに働かれていた姿が印象的でした。(24時間CT/MRIも撮れました)

また自分の専門分野でない、糖尿病、高血圧、肺炎、変性疾患など幅広いcommon diseaseを診ており、患者さんを包括的に診ていることが良く分かりました。

さらに柿添病院では、腹腔鏡下手術や腹水濾過濃縮再静注法など先進的な医療も行っており、『地域医療=先進的ではない』というイメージは払拭されました。

長崎県平戸市の中核病院として医療を担っている柿添病院(分院である中野診療所も含む)は、僕が想像していたよりもはるかにこの地域にとって重要な役割を負っていました。

急性期医療としては、2次救急指定病院ではありますが、24時間いつでも救急車を全て受け入れていて基本的に断ることはありません。心肺停止後の患者の蘇生から、軽度の外傷患者まで幅広い病態の救急患者を相手にします。

地域医療としては、近くに病院がなく移動手段ももたない、外来を受診することの出来ない患者さんの定期外来を訪問診療でカバーし、集団で暮らす養護施設の方には頻回に病院に通う手間を省くべくこちら側から出向いて診察をする。家族の覚悟があれば、患者さんをともに最後までお看取りする終末期医療も担っています。

そして平戸市の予防医療としては、乳児健診、健康診断から施設のワクチン接種まで、全ての世代の患者層の予防医療に携わっています。また寝たきりにならないように高齢者のリハビリテーションを積極的に推進しており、送迎もついている通所リハビリテーションでは高齢者の機能改善だけでなく、会話を通じて一人暮らしの方のQOL改善に大きく貢献しています。

それだけでなく、自力では生活することが困難となった方々のセーフティネットとしての役割も担っています。患者さんにとって次の住む場所への橋渡しが出来ることはきわめて重要であると考えます。

訪問診療を行っている中野診療所では、およそ50人(内25人ほどが施設入所中)の訪問診療を行っており、2週間に1度訪問診療を行うとすると、一人で負担するにはかなり重たいことになります。今後の課題としては、医師の地域的な偏重を避け、適切なタイミングで専門医がいる大病院に紹介出来るような総合医(在宅医)の数を増やすことが大事ではないか、またそういったことの重要性を皆が理解することが必要であると感じました。

平戸市の人口比率は、10年後の日本の予測人口比率に似ていると聞き、調べてみて驚きました。平戸市の医療は10年後の日本の医療の姿と言え、これから高齢者がますます増加していく中で、平戸市の医療は先進的な、将来の日本の医療のモデルケースとなると思います。
この研修で学んだことを今後の医療に活かして日々精進したいと思います。

末筆ではありますが、この1ヶ月間で大変お世話になった、柿添三郎先生、由美子先生をはじめとした、柿添病院の先生方/医療スタッフの皆さん/事務の方々に感謝の気持ちを述べて終わりたいと思います。誠に有り難うございました。
吉澤宏一