吉田 有希 (長崎大学病院)
吉田 有希
長崎大学病院
令和2年1月6日~令和2年1月31日
(医療法人医理会 柿添病院)

 柿添病院で一ヶ月間研修させていただきました。この研修期間で学んだこと、感じたことを述べさせていただきます。

 基幹の研修病院は、地域の中核を担う大学病院であり、入院する患者さんも重症例や特殊な症例のため、精査や専門的な治療を目的とした方々が多いです。しかし柿添病院に来て驚いたのは、一人の医師が診る患者さんの層の厚さです。研修内容は、主に病棟業務と外来研修がありましたが、病棟では全身打撲、帯状疱疹、鼠径ヘルニア、急性膵炎、冠攣縮性狭心症、大腸癌StageⅣなど幅広い疾患の患者さんを担当させていただき、地域医療での総合診療の必要性を実感しました。外来研修では、包帯交換やリハビリ前の診察や健康診断の診察、定期処方の方の外来などがありました。包帯交換やリハビリ前の診察では、何度か顔を合わせるうちに患者さんとのコミュニケーションがスムーズに取れるようになり、会話が弾むようになったのはとても嬉しかったです。健康診断の診察では、ただ結果を説明するだけでなく、説明する順番を考慮したり、使う言葉を分かりやすいものにしたりと、伝え方次第で聞き手の受け取り方も違うのだと教わり、はっとさせられました。
 また、柿添病院では「断らない救急」をモットーとして掲げており、当直ではインフルエンザのような軽症なものから心不全の急性増悪のような緊急入院が必要な重症なものまで様々でした。その中でも高次医療機関に紹介が必要な症例もあり、実際にくも膜下出血の症例を経験しました。一番近い三次医療機関でも救急車で搬送に40分かかりますが、初期対応を行い最善を尽くし搬送することがその時間を繋ぎ、救命率を上げるためにとても大事なことだと思いました。

 院外研修では、中野診療所や通所リハ、訪問リハなどを学ばせていただきました。リハビリは実際にどのように行っているか見る機会はなかなかなく、貴重な体験だったと思います。訪問リハでは、平戸本島からフェリーで30分ほどの度島にある5人の患者さんのお宅を訪問しました。家の周りの普段の散歩コースを一緒に回るお宅もあれば、Parkinson症候群の方の歩行訓練をするお宅もあり、患者さんの状態、生活習慣、住宅環境によってリハビリの内容は一人ひとり違いました。島という通所は難しく、時間や器材も限られた環境だからこそ、患者さん個人に必要なリハビリを訪問して行うことは、患者さんの生活の質を支えるために大事な役割を担っていると感じました。
 また、保健所に一日実習に行く機会もありました。結核などの感染症の把握や予防接種などの人を対象にした保健だけでなく、環境保全や食品衛生といった衛生環境面においても、保健所は地域の公衆衛生活動の拠点の場だということがとてもよく分かりました。

 この期間の研修医は一人だったため、最初は心細く感じることもありました。しかし、指導医を始めとした職員の方々はとても優しく、気にかけてくださり安心して研修することが出来ました。

 柿添病院での研修を通して、患者さんの医療に対する姿勢、家族背景、社会背景、住宅の立地条件など一人ひとりそれぞれが異なる背景を持っており、患者さんのニーズに沿った医療が必要だと感じました。医師としてこれから患者さんに接する上で、「病気を診る」だけでなく、患者さんに寄り添い「人間を診る」ことを意識して、診療に携わっていきたいと思います。一ヶ月という短い期間でしたが、ここでしか学べなかったことをたくさん教わりました。この研修で学んだことを糧に、これからも精進していきたいと思います。この研修に関わった方々にこの場を借りて心より感謝の意を申し上げます。本当にありがとうございました。
吉田有希