和田 真梨子 (地社会福祉法人 恩賜財団済生会支部 静岡県済生会 静岡済生会総合病院)
和田 真梨子
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部 静岡県済生会 静岡済生会総合病院
平成30年2月5日~平成30年3月5日
(医療法人医理会 柿添病院)

平戸研修が教えてくれたこと

 この度、私は幸運なことにも2回目の地域研修を、平戸の柿添病院で行うことができた。前回柿添病院で研修させて頂いた時、地域医療のために尽力されている先生方、スタッフの方々の姿に大変感銘を受け、そして平戸の人々の優しさ温かさに心を打たれ、またこの地でここの人たちと働きたいと強く思った。その願いが叶ったのだ。聞けば、2回来られた研修医は過去にほとんどいないらしく、今回行かせて下さった研修病院、受け入れて下さった柿添病院、双方に感謝してもしきれない。
 行かせてもらうからには、前回とは異なる、いや前回以上の研修にしようと思い、自分の中で目標を立てた。①地域の急性期基幹病院である柿添病院で、様々な症例を経験する。②患者の心理や社会的側面も考慮した全人的医療を行う。③平戸の医療を経験するだけでなく、少しでも貢献する。の3つである。この目標を胸に、2月4日、私は柿添に向かった。
 到着したのは日曜日だったが、外来に顔を出すと、早速救急車が来ており先生方が慌ただしく働いていた。その後も患者さんはひっきりなしに来院し、いかに柿添病院が地域の医療において重要な役を果たしているかを改めて実感した。私もさっそく患者さんを診ながら、またここで働けることに大きな喜びを感じた。
翌日からは病棟業務が始まり、内視鏡検査や手術も、何件も経験できた。病棟業務では担当患者さんを持たせてもらい、そのうちの数人はほとんどの治療・処置を任せていただけたため、試行錯誤しながら治療を考え非常に勉強になった。特に、褥瘡の患者さんは、私が3年目から形成外科に行くこともあるが、全身状態が非常に悪く、感染のコントロール・栄養状態の改善・浮腫の原因精査・皮膚疾患の治療、と色々な面からのアプローチが必要であったため、思い入れの強い症例となった。また、医療の面だけでなく、寝たきりで介護力の不足している高齢者をどうサポートしていくかといった社会的な面でも非常に考えさせられた。他にも、CVを入れたり、胸水を抜いたりといった手技も色々やらせて頂けた。
 手術は、胃全摘術、腹腔鏡下胆嚢摘出術、人工骨頭置換術、S状結腸切除術を経験した。また夜間の緊急手術も何件かあり、普段いる都市部の大病院と変わらない症例が多彩であった。それをこなしている先生方にはただただ感服するばかりだった。そして、私も先生のようになりたいと、身が引き締まる思いであった。
 院内の研修の他にも、訪問診療や通所リハビリテーション、保健所での研修もあり、様々な面から地域医療を学ぶことができた。前回行けなかったところにも行くことができて勉強になった。その中でも印象深かったのが、主治医意見書勉強会である。今まで介護保険や主治医意見書についてしっかり学ぶことはなかったが、今後密接に関わってくることなので今回話を聞くことができてとてもよかった。その中で言われた、医者にとっては何個もある書類仕事の一つかも知れないが、患者にとってはその後の人生を決める大切な書類であり、手術録や診療録と同じくらいしっかり書くべきだという言葉が、心に残った。
 今回もとても楽しく、学ぶことも多い研修であったが、最初に立てた目標が達成できたか自分に問うと、自信を持って頷くことはできない。1つ目の目標である、様々な症例を経験することは達成できた。しかし、私は、果たして全人的な医療を提供できたであろうか。少しでも平戸に貢献できたであろうか。真剣にやろうとすればするほど、自分の勉強不足を実感し、不甲斐なさが情けなかった。まだまだ私は、何もできない。もっと努力して出来ることを増やし、本当に患者さんのためになる医療を提供できる医者になりたいと強く思った。これも毎日、柿添の先生方が患者さんのために働かれている姿を間近で見ることができたからである。自分のロールモデルとなる先生方と一緒に働くことができたのは、3年目からどのような医者になるかを考えるにあたりとても幸運なことであった。
 今回感じたこと、学んだことを胸にこれからも努力していきたい。そして、またこの地に戻って、今度こそは、患者さんのためにベストな医療を提供し、平戸のために貢献したい。

 

和田真梨子