對馬 泰行 (東京大学医学部附属病院)
對馬 泰行
東京大学医学部附属病院
令和2年4月1日~令和2年4月24日
(医療法人医理会 柿添病院)

 この度、1ヶ月間弱という短い期間ではありましたが、柿添病院にて地域医療研修をさせていただき、非常に貴重な経験を得ることができたと感じております。地域医療研修では昨年一年間大学病院で経験したような病棟管理や手術参加、超音波検査の他に、初めて外来、健診、リハビリ施設や訪問診療に参加させていただきました。これらの研修を通じて感じたことは大きくわけて2つございます。
 1つは地域医療とは全人的医療だということです。柿添病院長の外来見学をさせていただいた際に印象的だったのが、「柿添病院のような病院では指摘されている疾患を見るだけではなく、それ以外にも重大な疾患を併発していないか見落とさないようにしないといけない。そうしないと患者さんからは『病院に通い続けていたのになんで!』という反応をされてしまうからだ。」と話されたことです。大学病院のように自分の専門に集中して他のプロブレムに関しては他の診療科に任せるというスタンスでは立ち行かず、総合診療が要求されるものだということでした。
 また健診などで特に感じたのが、患者に自分の言葉を真剣に受け止めてもらうためには患者とのコミュニケーション、人間関係も大事だということです。具体的には、健診で感じたのは、意外とタバコを吸っていた人が多く看護師さんでも昔吸っていた方も多いとか。そういった人にタバコやめましょうね、と一言いうだけではとうてい禁煙はむずかしく、実際「やめたいけどストレスが多いからね~笑」と流されてしまうことがたくさんありました。一方で、これはかなり特殊例にはなるのですが、近くのメキシコ料理屋さんに夕食を食べに行った際に、どうやら店長が院長と小学校からの同級生でとても親しいらしく、「この前外来受診したときにタバコとお酒はそろそろやめなさいと言われたからやめようかなと思っている。」と院長の言葉を真剣に捉えてくれている様子でした。このように医師と患者の間である程度の深い人間関係がないと医師の言葉は響かないのだろうな、と感じました。
 さらに地域医療ではリハビリ介入という面でもかなりの長期間で患者さんと向き合っていく必要がある、ということです。大学病院では高度専門治療が終了したあとは転院してリハビリや療養継続という方がほとんどで、治療が終了したあとの現場を見ることはあんまりなく、リハビリと言ってもなかなかすぐには良くならないし、病院や施設で行うリハビリだけではとうてい足りず、日々の生活のプライベートな時間でも自主的にリハビリしていただかないと機能改善は見込めないのかな、と感じました。
 以上の総合診療・コミュニケーション・リハビリと地域医療では全人的な医療が要求される、というのが今回強く感じたことです。
 もう1つ感じたのは、地域医療では名医の前医でなければならないということです。後医は名医という言葉がありますが、これは前に診察した医師よりも後から診察した医師の方が疾患の時間経過や前医が行った検査や治療の結果も踏まえて判断することができるので、後医は名医と呼ばれやすいといった意味合いだと理解しております。
 しかし地域医療のように高度に高齢化が進行した社会では、気づいたときには癌が進行しているとか、気づいたときには栄養状態が悪くて手術に耐えられないとかといったことが考えられ(そういったケースを実際に体験しました。その方は現在中心静脈栄養により栄養状態改善を待って開腹手術を検討中です。)、前医であっても正しく診断し迅速に治療開始することが必要なのではないかということです。
 また地域医療では特定健診のような一次予防、あと大学病院では専門の治療が終了したら残りは他院の外来を紹介、というパターンも多かったですが、地域医療ではその紹介された患者さんが再増悪しないかどうか、フォローしないといけないという点で二次予防としての役割も担っている。さらにリハビリについても長期的に向き合っていかないといけないので三次予防としての役割も担っているということで、一次・二次・三次予防全てを担う点でもとても重要な役割を担っている=名医でなければならないのだと感じました。
 以上、この1ヶ月の間に学んだことはたくさんあり、まだまだ自分の実力として次の医療に反映していくにはまだまだ訓練が必要だと自覚しておりますが、平戸市での研修を糧としてより良い医療を実践できるように努力していきたいと思います。この度は新型感染症が世界を震撼させている中でとても貴重な機会を誠にありがとうございました。
對馬泰行