田村 貴明 (独立行政法人労働者健康福祉機構 横浜労災病院)
田村 貴明
独立行政法人労働者健康福祉機構 横浜労災病院
平成27年10月5日~平成27年10月30日
(社会医療法人青洲会 青洲会病院)

 平戸の人々がどんな環境に住んで、どんな仕事をして、どんなものを食べているのか。平戸の人々の奥底に脈々と受け継がれている文化や伝統ってなんだろう。僕は一ヶ月の間、日を追うごとに、地元の方々と触れ合うごとに、平戸が好きになり、また興味をもっていった。みな、僕みたいなよそから来た若僧を暖かく歓迎してくださった。
 歴史を紐解けば、大陸に近いその地理的側面から、遣隋使や遣唐使の頃から寄港地として利用され、モンゴル帝国との戦いの舞台にもなった。また、ポルトガルなどとの南蛮貿易の舞台となり、おなじみのフランシスコザビエルもキリスト教布教のためにこの地を踏み、後にスペイン、オランダ、イギリス商館が立ち並んだ。そんな平戸の人々は異文化の土地きた客人をもてなす天才民族なのだろう。
 僻地や離島診療を行うには、そこにともに暮らし、その地域を愛せないと始まらない。美しい海とそこに浮かぶ無数の島々、夕焼けに照らされ秋風にたなびく黄金色の稲穂、空に輝く今にも降り出しそうな星々。そんな風景の中で、職種や年齢の分け隔てなく、昼はともに仕事をし、夜は酒を酌み交わす。笑う。寝る。本当に心地よかった。
 その地域に伝わる大切な何かを確かに引き継いで生きてきた地域の人々に力の限り生きていただく。それをお手伝いできるのが地域医療の醍醐味だと思う。
僕も生まれ育った横浜の地が大好きだ。僕を育ててくれた横浜という日本有数の歴史をもつこの土地に少しでも恩返ししたい。そんな気持ちもあって横浜で働いている。だから素晴らしい文化と伝統をもつ平戸で過ごせたことは光栄だったし、何より楽しかった。
 その土地の文化、すなわちそこに生きる人々に尊敬と愛をもってはじめてそこで地域医療が実践できること、そんなことを肌で感じた一ヶ月でした。
またいつか、平戸の空気を吸いに行きます。本当にありがとうございました。
田村貴明