髙木 俊敬 (社会福祉法人 恩賜財団済生会支部 静岡県済生会 静岡済生会総合病院)
髙木 俊敬
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部 静岡県済生会 静岡済生会総合病院
平成29年1月5日~平成29年1月26日
(平戸市立生月病院)

2017年1月の1ヶ月間、平戸市立生月病院にて研修させていただきました。

 研修を始めて感じたのは、生月島の医療を生月病院で支えているのだなということでした。島にある唯一の病院であるため、確かに当然かもしれませんが、唯一の病院であるという事実を知っていることと、現場に立ち医療に携わり実感することとでは、大きく印象が異なります。
 外来診療はもちろんのこと、日中夜間含めた救急対応、検診、往診、予防接種と住民のほとんどの方が生月病院へ受診ないし先生方による診察を受けており、何かしらの形で病院と関わっています。生月病院の先生方は名前を見ただけで、その患者さんの病状や、問題点、家族構成や生活の様子などがすぐ頭に浮かび、患者さんの主訴への対応や、病状の悪化を未然に防ぐ形で診療されており、治療だけではなく、保健全てを支えているのだと理解することができました。
 「生月を100歳の島にして、他の地域から見学に来るような土地にしたい」、「今の20歳の2人に1人が100歳まで生きると言われておる」この台詞は山下院長が外来時によくお話しされていた言葉の一部です。現代の医療レベルや平均寿命の高齢化から考えると、確かに100歳が増える可能性は高いと考えられます。そうした中で健康寿命としての100歳を増やすことが大切であるとも院長はお話しされており、そのためには病気の進行や発症を防ぐ保健分野、普段の外来から患者さんの状態を把握し、介入していくことが重要であるという印象を受け、実際それが行われているのが生月島なのだなと感じました。
 それを受けて、都市部の医療でも地域密着・包括といった形での医療がどの程度まで提供できるのかという疑問が生じました。
 私が研修している静岡は、500床を超える市中病院が複数存在し、開業医もたくさんあり、どんな時間帯であろうと医療機関への受診が簡単に気軽にできる地域です。そのため複数の病院に別の疾患で診療されている方も多く、情報の統合が容易ではないケースも多く存在し、患者さんの人数も多いと思います。患者さんの全ての状態を把握しづらい環境であるとともに、患者さんひとりひとりへの理解も薄くなりがちな印象を受けます。
 健康寿命を伸ばしていくには、地域密着・包括といった形での介入が大切なのだと言いましたが、実際に都市部で生月病院と同じ手法を用いようとすると、少なくとも静岡市全体の医療者の協力と情報統合が必要で、どの医療機関に統一して受診するかといった現実的な問題もあり実現には道のりが遠く都市部は都市部での手法を考案しなければ解決できないと感じました。
 また研修中には普段の業務では行くことのない、介護認定審査会や学校保健委員会に同行させていただきました。学生の頃に公衆衛生で学んだ事柄ではありませんでしたが、前述した通りで実際に出席させていただくことで勉強になることがあり、特に学校保健委員会で取り組まれていたメディコン活動には時勢の流れを感じさせるものがあり、問題点というのは時代によっても変化してくるのだと実感いたしました。
 そして、地域では医師の数が少なく、各診療科を満足にカバーできる状況ではないこと、その上で診療を行うとなれば必要とされるのは、専門科にとらわれない幅広い知識と主訴への対応力であると学びました。
 海が見え、景色の良い官舎と病院、大バエ灯台や生月サンセットウェイから見ることのできる絶景、生月・平戸のじげもんを使った食事の数々、そんな生月・平戸で過ごした1ヶ月間の研修は心身ともに落ち着いて過ごすことができ、真摯に患者さん、医療と向き合うことのできたかけがえのない経験となりました。
 最後になりましたが、生月病院の山下先生、中村先生、小村先生、石塚先生、そして毎朝朝食を用意していただいた濱田さん、食事のたびに車を出していただいた谷口さん、リハの度に気になったことを教えてくださった年徳さん・・・名前を出すとキリがないほど、たくさんの方にお世話になりました。生月病院の先生方、コメディカルの方々・事務職の方々それから温かく接してくださった地域の皆様に心から感謝いたします。
 1ヶ月間、学んだこと・感じたことを糧にして歩みを進めてきたいと思います。
本当にありがとうございました。    
髙木俊敬