田島 まり江 (独立行政法人国立病院機構 長崎医療センター)
田島 まり江
独立行政法人国立病院機構 長崎医療センター
平成30年7月1日~平成30年7月31日
(医療法人医理会 柿添病院)

 無事に地域実習を遂げられるだろうかと不安な気持ちから始まった地域実習が、終わるころには、楽しかった思い出が多く、柿添病院を離れることに名残惜しさを感じるほど充実した研修となりました。
 私事でありますが、4月に妊娠が判明し、その頃からつわり症状が出現し、研修を続けることに大きく不安を感じていました。当初は離島での地域実習の予定でしたが、体調を考慮し、夫婦(夫も研修医)揃って陸続きの場所で研修を受け入れてくれる地域病院がないか探すことになりました。急な受け入れは厳しいところが多く、半ば諦めかけていた時、柿添病院が快く受け入れてくださりました。柿添先生と初めて電話で話した際、「大丈夫だからね、体調を優先した研修にするからね」と優しく声をかけていただき、涙がでるほどの安心感を抱いたのを覚えています。
 幸い、柿添病院での研修が始まるころには体調は回復し、初めて訪れる平戸にワクワクとした気持ちも抱いていました。そうして始まった柿添病院での研修は、予想をはるかに超えた、とても濃密な一か月でした。学んだことはたくさんありますが、その中でも患者に対する姿勢を学んだことが一番大きかったです。柿添病院で働く先生方の、患者に寄り添う姿勢にとても感動しました。患者に寄り添う医療、と口ではよく耳にしますが、実際に体現化している医師に私はあまり出会ったことがありませんでした。忙しい業務に追われ、腰が痛いと訴える患者にはすぐにレントゲンを撮るといった、画像や検査に頼る診療になっていました。しかし、柿添病院の先生方は患者が痛いと訴えるところをしっかりと触って確認し、痛いね、きついねと痛みを理解することも大切であると考えていました。患者は、痛みを取り除いてくれることはもちろんですが、痛いところを実際に触って確認し、自分の痛みを理解してくれることも望んでいるのだと、気づかされました。院長先生が教えて下さった「患者には性善説で対応し、病気には性悪説で対応せよ」という言葉があります。これは、患者の訴えにはよく耳を傾け共感する、一方病気に対しては本当にないか、疑って診察するという姿勢です。まさにこの言葉通りに実践されている先生方の診察を見ることができ、今後の医師人生で要となる学びを得ることができました。
 その他、柿添病院で学んだことはたくさんあります。健康診断や内科外来、リハビリ診察、訪問診療といった院内研修や、訪問リハビリや訪問診療、5歳児検診、保健所研修といった院外実習など幅広く研修させていただきました。これらを通して、地域病院で働く医師の役割・働き方や、他職種の方の仕事内容を学ばせていただきました。地域で働く医師には、幅広い知識と見落とさない診察力が必要であると思いました。一か月に一回しか会わない患者のいつもと違う様子を見落とさないように患者から情報を聞き出す問診や、医師の数が少ないため、幅広く医療知識を持つ必要があります。今後、内科の道に進もうと考えていますが、内科領域だけにとらわれず外科など他科へも興味をもって勉学に励みたいと思います。
 この一か月、日中の研修業務以外でも先生方には大変お世話になりました。美味しいお店で食事をしたり、絶品の手料理を振舞っていただいたりと、たくさんのおもてなしをして頂きました。先生やスタッフ、同期の研修医と談話する機会が多くとても充実していました。柿添病院の先生方やスタッフの方は温和で、母親のような安心感・優しさがあるように感じます。柿添病院で研修をすることができ、心から嬉しく感じます。
 最後になりますが、急な研修を受け入れてくださり、さらに充実した地域研修をさせていただいた、柿添病院の先生、スタッフの方々に改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
田島まり江