田島 浩之 (独立行政法人国立病院機構 長崎医療センター)
田島 浩之
独立行政法人国立病院機構 長崎医療センター
平成30年7月1日~平成30年7月31日
(医療法人医理会 柿添病院)

 7月上旬からの約1か月間、平戸市中心部にある地域密着型の柿添病院で地域研修をさせていただきました。地域研修がはじまる前の地域病院に対する私のイメージは、プライマリケアが主な業務で、いわゆる町医者のような存在として地域の方々と密につながった医療を提供しているというものでした。研修がはじまってみると、そのイメージは一部間違えではありませんでしたが、予想と大きく違ったこともありました。それは、診療の範囲が定期処方や健診などの外来業務から、腹腔鏡下手術や人工骨頭置換術などの手術、また病棟では人工透析や人工呼吸器管理、化学療法の患者さんの管理まで幅広く、多岐にわたることです。柿添病院は24時間365日救急患者を受け入れ、その中には平戸の南方や離島から長い時間をかけて来院する患者さんも多くいて、平戸に住む患者さんにとってなくてはならない存在でした。症例としても内科・外科疾患から小児疾患、虫・蛇などの動物咬傷まで多岐にわたり、軽症の方から重症の方まで様々な対応が求められるため、医師としての技量が試される場所だと思いました。自分が日頃研修している病院や大学病院などの外来では、疾患の種類によって専門分野に振り分けられますが、柿添病院では専門分野以外のことにも対応していかなければならず、少ない医師数で多くの仕事量をこなしていく必要があります。その一方で、忙しい業務の合間に積極的に勉強会や学会に参加し、論文作成・学会発表を行っている先生もいらっしゃいました。そんな生活を普段からこなしていらっしゃる先生方は、月並みですがとてもすごいと思いました。
 研修の中で上級医の先生方から学んだことは他にもあります。それは患者さんに対する姿勢です。外来診療では診察室に入室してくる時からしっかりと顔を合わせ、世間話を交えながら患者さんの緊張を解いていき、現在の状態を判断していきます。色々な思いを抱えて病院を受診している患者さんの気持ちを理解し、親身になって話を聞き、どんな患者さんにも必ずじっくりと時間をかけて診察している姿がありました。また、院長先生の“患者さんに診療を行う時は、自分の大切な人に行う診療と同じことをする”という言葉に感銘を受け、医師として診療を行っていく際の心構えを教えて頂いたと思います。
 外来・病棟業務などの日頃の診療の他に、柿添病院での研修では訪問診療や訪問リハビリテーション、保健所実習、5歳児検診など普段経験できないような研修を行うことができました。その中でも特に印象に残ったのがリハビリテーションです。現在脳疾患や外傷、高齢による運動機能の低下など様々な要因で機能が低下した患者さんに対して、早期にリハビリを行うことは機能維持やADL向上のためにとても重要だと考えられています。今後医療の発展で高齢者の数が多くなると予想されている現代において、ADLを保ったまま自立して生活していくことが大切になります。恥ずかしながらリハビリの重要性を認識してはいましたが、実際にどのような方法でリハビリが行われているかの詳細については知りませんでした。柿添病院の研修ではリハビリを学ぶ機会が多くあり、理学療法士の方とお話しする機会が多くありました。そのお話の中でプロフェッショナルとしての知識量と患者さんの機能を改善させたいという熱い想いに触れることができました。また、患者さんのリハビリを普段から処方している医師は、機能障害やリハビリに関する知識が広く必要だということを実感し、とても勉強になりました。
 1か月と短い期間でしたが、本当に学ぶべきことが多く、医師としての姿勢、そして将来の進路にも大きく関わる濃密な時間を過ごすことができました。また、同時期に全国から平戸に集まったたくさんの同期と話すことができたことも自分にとって大いに刺激になりました。
 最後になりましたが、地域医療研修として、とても充実したプログラムを用意してくださり、貴重な時間を割いて指導して頂いた柿添病院の先生方、また普段の診療や日常生活までサポートしてくださったスタッフの方々に深く感謝したいと思います。
田島浩之