白畑 航 (地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立西神戸医療センター)
白畑 航
地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立西神戸医療センター
平成29年8月21日~平成29年9月1日
(平戸市立生月病院)

 今回2週間という短い期問ですが、平戸市の生月病院で地域医療研修をさせて頂きました。今まで見てきた病院は、出身の大学病院か現在働いている医療センターくらいで、それぞれ618床、450床とある程度の規模のある病院でした。それに対し、今回研修させて頂いた生月病院は60床と10分の1ほどの規模であり、かつ生月町での唯一の病院です。そこではこれまで当たり前に思っていた医療との多くの違いを感じました。
 まず、診療科の違いについてです。今まで見てきた病院では、消化器内科や呼吸器内科、糖尿病内科、眼科、皮膚科、形成外科、小児科など多数の診療科がおり、それぞれの専門の医師が複数いました。更にその診療科の中でも専門が細分化されています。例えば、整形外科では、股関節専門、脊椎専門、腫瘍専門などが挙げられます。そのような環境では、自分で分からないことがあれば、すぐに専門家に任せることができます。一方、生月病院では、一人の医師が消化器から呼吸器、循環器などの内科だけでなく、外科や小児科まで科を問わずに幅広く診療にあたっているのです。ここでは、一人一人の医師が多分野に亘る広範な知識と、自分が診なければならないという責任感を要求されます。
 次に、病院の地域性についてです。生月病院では、外来診察中に病気の話だけでなく、患者さんの生活にまで話が及ぶことが少なくありません。医師側は患者さんの生活背景などまで把握しており、患者さん側からは不信感や不満感を感じることが少なく、医師患者関係が醸成されているように感じました。また、医師患者間だけでなく、患者さん同士や他の医療職との会話も多く聞くことができました。そういった様を見ていると、まるでここがサロンであり、会話や交流をしに来ているようにさえ感じました。生月病院は地域とのつながりが深く、病院全体が地域に溶け込んでいるような印象を受けました。
 また、今回の研修中に平戸市で行われたサマーキャンプにも参加させて頂きました。そこでは、南大東島で一人で診療所を営んでいる医師や海外で医療支援をしていJICAの職員の方など、様々な形で地域医療に携わっている方々の講演を聴いたり、全国から来ている他病院の医師や看護師だけでなく、福祉関係や地域の博物館の館長のような方まで幅広い他職種、学生との交流やディスカッションを行いました。普段は医師や看護師など同じような環境にいる者同士で意見を交わすことが多く、異なった視点からの斬新な意見を聞くことが出来、興味深く感じました。
 平戸市での研修を終えて、今後地域との関わりを考えながら診療にあたっていきたいと思います。
白畑 航