塩崎 絵理 (独立行政法人国立病院機構 長崎医療センター)
塩崎 絵理
独立行政法人国立病院機構 長崎医療センター
平成30年8月1日~平成30年8月31日
(医療法人医理会 柿添病院)

 私は柿添病院で8月の1か月間、研修させていただきました。初めは病院の規模も違えばシステムもカルテの使い方も違い、分からないことばかりでしたが、徐々に慣れてきた頃に医療センターへ帰ることが少し名残惜しい気がします。地域医療について感じたこと、研修内容について、そしてこの1か月を通しての感想を述べたいと思います。
 基幹病院として研修している長崎医療センターは1~3次救急疾患を受け入れており、当直帯にはwalk inの患者は多いもののcommon diseaseよりは重症例や特殊症例、先進治療が多い印象です。他の病院からの紹介や搬送も多く、治療が終われば近くの病院でフォローとなります。この1か月の研修では最初に受診する場として「かかりつけ」の存在の重要性を痛感しました。高齢社会となる今、ほとんどの患者が生活習慣病をはじめとした多くの合併症を抱えています。定期的な血圧管理、肝炎のフォローなど全身を診るということが「疾患」というより「患者」の健康寿命を延ばしていくのに重要だと思いました。DMによる合併症を予防したり、些細な患者の変化に気づき精査をしたりと、地域の予防医療を担っているのだということが分かりました。
 医療センターの当直では手を切って縫合することはあってもその後の経過フォローは開業医へ紹介することになります。ここでは毎日付け替えがあり、外傷が徐々に治癒していく経過をみることができました。また、健診も多く診させていただきました。普段は病気の人、あるいは主訴がある人を診ることがほとんどで何も症状のないところから異常がないか見つけるというのがいかに難しいか分かりました。心電図、レントゲン、エコーなど疑って見なければなかなか異常を見つけることはできず、日々トレーニングしていきたいです。
 一方で手術や内視鏡など、ここで治療できなければ佐世保や離れた病院で紹介・搬送しなくてはならず、できるだけこの病院で治療しよう、という病院のポリシーを感じました。そのためには最新の知見を取り入れるべく様々な文献を読んだり勉強会を開いたりと勉強に勤しむ姿を見て、知識のアップデートはどこにいてもできるのだと思いました。救急疾患に関してもできる限り受け入れており、大きな病院であれば各科の医師を呼ぶことができるのに対してその場にいる医師で全て治療を行っていました。専門分野に限らず幅広い知識と経験が必要であることを改めて感じました。
 研修中は多くの院外研修や勉強会などの機会を設けていただき、様々な経験をすることができました。中野診療所では普段オーダーしているリハビリで実際にどのような器具を用いどのようなリハビリをしているか診ることができ、車椅子移乗や腰痛の人の起こし方などを教えていただきました。また脳梗塞などの退院後の状態をみることができました。ある程度体の動く人でも食事の準備や風呂掃除などはやはり大変で、1日リハビリに行く中で昼食を摂り入浴をするということが利用者の負担をかなり軽減することができると感じました。訪問診療では、日常生活は工夫しながら過ごせているが麻痺があるために遠方から通院できない人、元気に独り暮らしをしているが交通手段がなく通院できない人など様々な患者背景をみることができました。 また、風邪をひいて咳や鼻汁があった際、薬を処方しても薬をもらうまでも時間がかかり、診療・調剤・介護など様々な力が必要なのだと感じました。
 通所リハ毎快では比較的体の動く方が多く、中野診療所よりも少人数で、全員が器械を使いながら活き活きとリハビリをされていました。患者さんの状態と希望に応じてどの施設が最適かプランを組む、ケアマネージャーの役割についても学ぶことができました。介護保険の仕組みや主治医意見書などについても教えていただきました。
 わだつみの里ではほぼ寝たきりの人から自分で食べたいものを伝えることができる人まで様々でした。普段の様子を施設の方から聞くことができるという点では患者の現状を知ることができますが、その場で検査をすることができないという点では訪問診療に近く、家族がどこまで治療を求めるかも人それぞれで希望に応じて対応していく必要があると分かりました。
 大島の訪問リハビリでは、離島ならではの特徴・問題を感じることができました。本土であれば通所リハが可能な状態であっても島内は施設不足であり、フェリーに乗って移動するのはなかなか難しいため訪問リハを行っている方がほとんどでした。デイサービスなどに通うこと自体抵抗があり、施設内でも特殊浴槽で入浴する姿を島民に見られたくないという希望が強いことなどの問題を抱えていることが分かりました。島内には透析施設がなく、血液透析が必要になれば週に3度フェリーで通院することになり、家族の介助があってもADLが低下すれば本土での入院や施設入所が必要となること、フェリーの中も段差が多く高齢者には受診も難しいこと、救急車を呼べばすぐに島内の人に知られてしまい、またチャーター船で救急搬送になるため費用がかさむことなど島ならではの問題も知ることができました。
 また、期間中はコンソーシアムのサマーキャンプにも参加しました。学生や様々な職種の方とディスカッションをしたり、多方面からの先生方の講演を聴いたりして、自分の今後の医療への関わり方について考えを深めることができました。離島からへき地の診療所、国外まで働いている場所は様々でしたが、その地域で求められていることをする、という「地域医療」のあるべき姿を診ることができました。
 1か月間、あらゆる経験が新鮮で勉強になる日々でした。体調を崩した際には心配して電話をかけていただき、食事を部屋までとどけてもらったり薬を取りに行ってもらったり、多くの病院の方々の優しさに支えられました。ありがとうございました。1か月の経験を糧に、医療センターに帰ってからも勉強に励みたいと思います。将来の進路はまだ決めていませんが、次にお会いするときには成長した姿を見せることができるように頑張ります。1か月間大変お世話になりました。ありがとうございました。
塩崎絵理