大和田 啓暉 (東京大学医学部附属病院)
大和田 啓暉
東京大学医学部附属病院
平成29年10月2日~平成29年10月31日
(医療法人医理会 柿添病院)

 1ヶ月間という短い期間でしたが、私は柿添病院でとても充実した研修をさせて頂きました。救急外来や病棟管理、健診、様々な施設での研修などを通して地域医療のあり方を学ぶことができました。
 救急外来では、研修初日の当直で救急搬送のCPAの症例を経験したことが印象的です。患者さんは幸いにもROSCが得られたので、集中治療管理を行うために佐世保にある病院へドクターヘリを使い転院搬送することになりました。東京の大学病院で研修をしている私にとって、ドクターヘリでの転院搬送は経験したことがなく、ランデブーポイントで転院先の病院の医師と看護師に引き継ぐ瞬間までの疾走感は今でも忘れられません。
 佐世保の病院までは、柿添病院からは直線距離で言うと、およそ新宿から埼玉県所沢市くらいまでと同じくらいです。救急車では大体30分程度、ドクターヘリでは離陸から着陸まで15分程度の時間を要します。平戸市が属する二次医療圏である長崎県県北地域は、そこまでのコストをかけないとセンター病院まではアクセスできない状況であるため、柿添病院では地域医療の要としての役割が非常に大きかったです。病棟では、肺炎や感染性胃腸炎といった一般的な内科管理から、総胆管結石による胆管炎に対するEST、閉塞性黄疸に対するPTBDといった専門的な内科処置、イレウスや鼠径ヘルニアに対しての手術、胃癌患者の幽門側胃切除術、大腿骨頸部骨折に対する大腿骨頭置換術といった外科症例まで、私が一ヶ月間で経験しただけでも本当に多彩な症例がありました。限られた医療資源の中での環境だからこそ、平戸で医療を完結させるという理念で地域を支えていらっしゃる先生方の情熱を感じることができました。
 また、地域医療への貢献のあり方として、保育所健診や人間ドックの健診対応を行ったり、退院後の生活の場ともなり得る介護施設での研修やリハビリテーション研修も行いました。予防医学から慢性期・ターミナルまで幅広く住民一人一人のライフステージに合わせた医療からのアプローチを実際に学ぶことができました。
 東京で仕事をしていると見えづらい地域医療の現状と課題を目の当たりにしたこと、そしてそこで展開される医療スタッフの熱い思いを肌で感じながら僅かばかりでも平戸地域の健康に寄与できた経験を、今後の医師人生で大きな糧として精進したいと強く思いました。
 最後になりましたが、優秀とは言えない研修医であったにも関わらず、丁寧に指導してくださった上級医の先生方、優しく対応してくださったコメディカルスタッフの方々、そして一緒に支え合った研修医の同期の二人、本当にありがとうございました。
大和田啓暉