大石 龍之介 (社会福祉法人 恩賜財団済生会支部 静岡県済生会 静岡済生会総合病院)
大石 龍之介
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部 静岡県済生会 静岡済生会総合病院
平成28年10月24日~平成28年11月18日
(平戸市立生月病院)

 この地域に来て最も強く感じた事は、患者さんが病院に求めている事が都市部とは異なる傾向にあるという事です。

 僕のいる静岡という街はそれほど都会ではありませんが、人口規模では日本で10番目に位置する、平戸と比較して都市部にあたります。そこでは、やはり患者さんは医療に「確実な医療」を求めており、根底には「現代の進んだ医学ならば何でも何とかなる」という意識があるように感じられます。そのため、言葉1つ1つに気を使い、言わば訴訟対策をとるために、特にICの際には含みのある表現を使います。しかし、生月病院では全くその様相は異なっていました。

 患者さんはどちらかと言うと、主治医に顔を見せに来ている、主治医の顔を見に来ている、会話をしに来ている、そんな印象を受けました。救急車で運ばれてくるような症例でも、「患者の死」に対する家族の気持ちは、都市部ほど否定的ではないように感じました。死を自然と受け入れる、そういう方が多い印象です。

 この平戸、生月というへき地と言われる地域は、高齢化が進行し、ほとんどの人が病院に通院しているのだと思います。そうなると、もはや病院は治療を行う特別な場所ではなく、日常生活の中の1つであるように感じました。そういった環境が、確実で積極的な医療よりも、人としてのふれあいを求める傾向を作り出したのかなと感じました。患者と医師、というよりは、人と人、同じ島民同士、そういう意識が根底には存在したように感じました。

 そういった患者さんのニーズに答えるべく、日々少ない人数の医師で奮闘している、山下院長はじめとした先生方には感服致しました。色々と気づく事が多い1ヶ月でした、ありがとうございました。
大石龍之介