N.S (地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立西神戸医療センター)
N.S
地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立西神戸医療センター
平成30年6月18日~平成30年6月29日
(医療法人医理会 柿添病院)

 私の研修病院は日中も夜間も常に患者が超満員の状況で、一人一人の患者診察に時間を割くことが困難です。患者は数時間に及ぶ待ち時間の末、やっと診察室に入ります。医師に自分の苦痛や苦悩をゆっくり聴いてもらいたくても、医師に言葉を遮られてしまいます。ドライな最低限の会話しか出来ないことも多々あります。この現状に患者や家族が不満を抱いていることは理解しています。隠れている重症な疾患を見逃してしまうこともごく稀にあります。わかっていながらも、患者が飽和している以上、ある程度仕方がありません。しかし、貴院は日中も夜間もゆっくりと一人一人を診察します。近況を聴き、全員に聴診をし、実際に身体に触れ、真摯に対応、指導しています。誰一人として偉そうにしたり不機嫌な態度をとる人はおらず、笑顔で優しい声をかけます。患者は皆、お礼を言い笑顔で診察室を去っていきます。なかには元気をもらえた、来てよかったと言う人までいらっしゃいます。再度受診したくなるような温かい診察がここにはあります。総合病院でありながらもかかりつけ医のようなアットホームさを兼ね備えている点が最大の魅力だと感じました。
 また、地域の病院でありながらも『都市部と変わらぬ医療を地域の人々へ』という貴院の創立理念を肌で感じた2週間でした。先進の医療機器を備えていること、エビデンスを常に意識した医療を提供していること、先端医療を学びに足繁く学会に足を運んでいる先生方のご尽力を身近で拝見して、皆様の貪欲な姿に強い感銘を受けました。その情熱の源はやはり平戸の人々への愛情なのでしょう。医師としてではなく一人の人間として相手を思いやり、困っている時には寄り添い助け合うという医療の根源を私は医学的なことばかりに気をとられ見失っていたような気がします。
 その精神は救急医療にも強く反映されており、『断らない救急』を実現しています。日中でも夜間でも救急車が到着すれば、医師も看護師も皆自然と集まります。一人一人が何か出来ることはないかと常に考えて動いています。医師だけではなく、看護師も検査や治療方針を必死に考えて発言します。このような光景は初めて拝見しました。人員の少ない地域での緊急事態は医師も看護師も職種は関係ないのです。目の前の患者を助けたいという思いが目に見えるようでした。こんなに人情に溢れた救急は都市部で見たことがありません。本当に素晴らしいものを見せて頂きました。
 私は将来放射線科診断医になります。単に画像の所見を読影するだけでなく、臨床所見や検査所見なども総合的に判断して、臨床医と患者の求める読影情報を提供できるような診断医を目指しています。近い将来、遠隔診断をしてみたいという憧れがありました。しかし、実際に遠隔診断を委託している貴院での研修で感じたことは、遠隔での読影は不十分になりがちだということです。患者のカルテを参照することや、過去の画像と比較することなどが不可能なため、少ない判断材料で読影しなくてはならず、読影レポートに厚みをもたせることが難しいです。また、読影後に臨床医の診断、経過、手術所見、病理所見などをカルテ上で確認したり、主治医と討論を交わすなど、フィードバックを重ねることで、読影力を高めることが出来ますが、遠隔ではそれが困難です。下積みをしっかりとした上でいつか少ない情報量でも正確に出来る実力と自身がもてた時に、遠隔診断で様々な病院や医院の画像診断をしたいです。遠隔診断がさらに普及して読影の精度が上がれば、創立理念にも少し近づけると思います。将来このような形で地域医療に貢献できること日を楽しみに、医師としての研鑽を積んで参ります。2週間という短い間でしたが、様々な大切な思い出を作ることが出来ました。親切にして下さった皆様のことは決して忘れません。楽しい研修を本当にありがとうございました。
N.S