望月 凱 (東京大学医学部附属病院)
望月 凱
東京大学医学部附属病院
令和元年12月2日~令和元年12月27日
(医療法人医理会 柿添病院)

 年の瀬の1ヶ月間、平戸の柿添病院で研修させていただきましたのでご報告させていただきます。
 東京から長崎空港まで2時間弱、そこからバスを乗り継ぐこと4時間、平戸市役所前のバス停に降りたった時は18時を回り辺りは真っ暗、しかも外は雷雨でした。見知らぬ土地に豪雨の中降ろされた時の孤独感は相当なものでありました。しかしずぶ濡れになりながらも病院に着くと、研修担当の由美子先生が気遣って出迎えてくださり、しかも夕食を用意してくださっていました。先生の温かさに触れて、あたかも実家に帰ってきたような安心感、懐かしさを自然に覚えたものです。
 翌日から研修が始まり、2日目には当直に入りました。平戸での最初の当直で急性冠症候群の患者が夜中にほぼ同時に2人来院し、一人は処置中にCPAになるなど壮絶な夜を過ごした時にはとんでもない病院にきたものだと思ったものですが、そのようなことは後にも先にもなく安心しました。
 研修では科に関係なく、あらゆる疾患を診ました。外来では糖尿病・高血圧・腰痛症・不眠症・慢性心不全・慢性腎臓病などのcommon diseasesをフォローアップし、リハビリの診察も行い、入院では胆管炎や胆石症、腸閉塞、胃癌や大腸癌肝転移の症例などを担当しました。先述のように外来では心筋梗塞の患者の初療から搬送まで携わり、当直では院内CPAに対応し、皮質下出血の患者を搬送したりもしました。助けられる命もあれば、残念ながら救えない命もありました。外来で時間をかけてじっくりフォローアップする疾患から急に手術や化学療法を要する疾患、あるいは1分1秒を争う疾患まで、専門科に関係なく限られた資源の中で最善を尽くし、患者・家族に寄り添う先生方の姿は目に焼き付いています。
 さらに柿添病院では手術も積極的に行っており、全身麻酔や脊髄くも膜下麻酔にも多数関わることができました。普段大学の麻酔では必要に応じてビデオ喉頭鏡で挿管し、BISモニターやTOFモニターなども併用して全身管理し、AODやTIVAで麻酔維持を行なってきた身としては、AOSで限られたモニターのみで麻酔管理を行うというのは斬新でありました。大学の恵まれた環境に改めて気づかされた一方で、麻酔はモニターに頼るだけではなく、術中も患者自身を診てはじめて管理ができるものであるということを、頭では分かっているつもりでありましたが、身をもって実感させられました。そして、限られた医療資源の中でも安全な麻酔をかけられるよう、今後も精進しなければならないと改めて痛感させられた1ヶ月でした。
 柿添病院での1ヶ月の経験は研修生活の中でも非常に大きな財産となったように思います。この1ヶ月で学んだことを今後の医師人生にも必ず生かしていきたいと思います。このような素晴らしい機会を提供して頂き、関わって下さった柿添先生の皆様、そして全てのスタッフの方々にこの場をお借りして御礼申し上げます。
望月 凱