松川 敦紀 (地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立西神戸医療センター)
松川 敦紀
地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立西神戸医療センター
令和元年6月3日~令和元年6月14日
(医療法人医理会 柿添病院)

 私は2週間、柿添病院で研修させていただきました。地域医療研修を行う前は、地域医療がどのようなものか想像できず、ただただ平戸という地に行くことだけを楽しみにしておりました。実際に平戸に到着した時には、病院前の通りの雰囲気やアパートの前から眺望できる平戸の海や街並みに大変感銘を受け、そこから始まる2週間の生活に心が高鳴ったのを覚えています。
 研修が始まると慣れない病院での業務に四苦八苦しながらも、それまでの研修では経験できなかった機会にも携わることが多く、日々勉強になりました。健診結果の説明一つとっても、どのように順序立てて説明すれば患者さんは落ち込むことなく、今後の生活に向き合えるかということを学び、それは普段の診療でも役立つと感じました。また、度島での訪問リハには理学療法士の方と2人で向かい、普段じっくりと話す機会の少ない理学療法士の方と1日行動を共にして、リハビリの考え方を学びました。そしてまた、こういった地での訪問リハの在り方や意義を知ることができました。訪問リハでは、ただリハビリやその指導を行うだけではなく、会話やバイタル測定などを通して健康状態を把握し、病院にはなかなか行けない患者さんの健康に重要な役割を担っていました。また、警察もいない島で生活されている高齢者の生活の手助けについては、近所の方々がされていました。高齢化が進み、都心部における高齢者の社会からの孤立といった問題が挙げられている昨今、度島での医療や生活というのは、そういった問題を解決する糸口になるのではないかと感じました。他にも、5歳児健診、留置所健診、訪問診療、特別養護老人ホームでの診察、救急隊との会議など貴重な機会をたくさんいただき、刺激になる毎日でした。
 地域医療というものは、やはり多くの方が考えるように都会と比べると医療設備は整っていないことが多く、医者の数なども少ない。しかしだからといって、都会より明らかに医療の質が劣っているかと言われると、そういう訳ではないと知りました。地域医療において一人の医師が診なければいけない疾患は広く、平戸の先生方はたとえ専門外であっても知識と経験が豊富でした。また、問診や身体診察から得ようとする情報も多く、患者のわずかな変化に気づき、すぐに対応できると感じました。そういった経験や技能というのは、地域医療だけではなく、専門が細分化されている現在の都会の大病院であっても、医師として必要な要素であると思います。専門分野に進むと総合診療的な目線というのは薄れるかもしれませんが、度々今回の研修での経験を思い出し、活かしたいと思います。
 平戸での2週間はあっという間でした。それはきっと、新鮮な日々を過ごすことができたからだと思います。熱心に指導してくださった先生方やスタッフの方々には本当に感謝しております。誠にありがとうございました。
松川敦紀