真鍋 雄二 (東京大学医学部附属病院)
真鍋 雄二
東京大学医学部附属病院
令和2年4月1日~令和2年4月24日
(医療法人医理会 柿添病院)

 千葉の実家を出発し約半日かけて長崎県平戸市に到着しました。九州にはほとんど訪れたことがなく地域医療研修で長崎県に訪れることをとても楽しみにしておりましたが、3月末の時点で長崎県は新型コロナウイルス陽性者がいなかったため手指消毒やマスクなど自分ができる予防策はこれでもかと徹底して長崎県に参りました。そんな状況下でも柿添病院の先生を始めスタッフの皆様に心よく受け入れてくださってとても嬉しく、柿添病院で行う研修に胸を躍らせておりました。広大な海や満点の星空といった大自然に囲まれ、東京や世界の喧騒から離れたとてものどかで落ち着いている環境で研修が始まりました。
 柿添病院では、定期外来や健診(特定健診・乳児健診)、病棟業務、手術、診療所・訪問診療・通所リハビリの見学など多岐に渡る研修を行いました。特に定期外来や健診では大学病院では経験できないものであり、患者さんへの対応の仕方や言葉遣いなど難しさを感じました。また健診では相手にどう伝えれば意識改革を促すことができるか試行錯誤の繰り返しでした。そんな中、院長先生を始めどの先生方も熱心にかつ丁寧にご指導下さり、勉強になることばかりでした。さらに柿添病院では手術も定期的に行っており、自分の担当患者が急変し土曜日に緊急手術を行ったのも印象的です。
 私が柿添病院での1ヶ月の地域医療研修を通して大きく2点のことを感じました。1点目は「患者さんの目線に立って対応する」ということ。相手の訴えに傾聴し、上手に共感し、相手の目をきちんと見る、そういった基本的な態度や姿勢が非常に重要だと感じました。院長先生を始め先生方の外来や病棟での患者さんへの対応を拝見し、こういった姿勢が印象的でした。データや画像だけでなく、患者さんの背景にある様々なことを理解した上で問診・身体診察を通して丁寧に対応することが「患者を診る」ということそのものなのではないかと考えました。また自分の専門外のことであっても誠意を持って対応することが地域医療・総合診療において重要であり、それが患者さんやその地域とのラポール形成に繋がっていくと感じました。
 2点目は「予防医学・健康増進・健康維持の促進する」ということ。医師が少ない地域あるいは専門医がいない地域での医師の役割として、将来的な罹患率を下げるためにいかに患者教育を行い予防意識の向上に努められるか、あるいは健康維持を促進させられるか、そういった治療以外での役割も今後問われてくると考えます。また都心から離れた地域において通所リハビリなどの施設は高齢者の孤立を回避し運動機会やコミュニケーション機会を増やす役割も担っており、認知症予防・フレイル予防にも効果的と考えます。故にこういった施設の拡充・整備が今後も必要になってくると思われますが、そうなるとスタッフの確保や交通面といった問題が生じ、地域性・人口密度・必要度のバランスが重要となり県や市区町村とのより一層の連携が必要になってきます。また18歳以下の子供たちの将来的な罹患率や介護・看護必要度を減少させるべく早期からの予防教育実施や運動機会の増加も施策として上がるのではないかと考えます。平戸における地域医療を通して将来の日本の医療における予防医学の必要性は高いと実感しました。
 私にとってこの1ヶ月で経験できたすべてのことが有益で勉強になることばかりで、ここで得たものは自分の財産です。この研修を通して都心から離れている地域の医療事情や問題点などを目の当たりにし、それらを自分なりに考えられたのも良い機会となりました。
 このような大変な状況下でも快く受け入れてくださり研修しやすいよう色々と取り計らってくださった柿添病院の皆様、そしてながさき県北地域医療教育コンソーシアムの皆様に心より感謝申し上げます。
 貴重な機会を設けてくださり本当にありがとうございました。
真鍋雄二