清宮 優香 (独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院)
清宮 優香
独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院
令和元年9月30日~令和元年10月25日
(平戸市立生月病院)

 平戸市立生月病院で、9月30日から10月25日までの4週間、地域医療研修をさせていただきました。生月病院では、外来診察や健診、救急外来、訪問診療、こども園の健診、高齢者施設の回診の業務に主に参加させていただきました。島内唯一の病院ということもあり、生月病院では普段働いている病院での診療とは異なる点も多く、特に印象に残ったのは夜間の救急外来での診療でした。ムカデ咬傷などの症例を除き、疾患の種類自体には大きな違いはありませんでしたが、大きく異なっていたのは検査を行うかどうかの閾値でした。普段働いている病院では、夜間でも検査技師、放射線技師が常駐しており、簡単に血液検査やCT検査等まで行うことが出来ますが、生月病院ではその都度来ていただかなければならないため、検査を行うべき症例を見極めなければなりません。血液検査をせずに身体所見のみを頼りに患者さんを帰すことに初めは不安を覚えましたが、問診や身体診察だけでも、より丁寧に時間をかけて行うことでたくさんの情報が得られることが再確認でき、逆に普段いかに検査に頼った診療になっているかを思い知らされた良い経験でした。
 また生月病院での診療は、「病気を診る」よりも「患者を診る」ことに重きを置いた医療であることも印象的でした。それぞれの患者さんと医師のつながりが強く、上級医の先生方が、カルテを見なくても既往歴や家族のこと、職業などの生活背景まで把握していらっしゃることに驚いたのをよく覚えています。現在の医療は分業が進んではいますが、患者さんの一番近くでそれぞれのニーズに応えるという点において、やはり日常生活に深く関わり、全身を幅広く診られるプライマリケア医の果たす役割は重要であることを実感しました。私は来年からは小児科医として働く予定ですが、小児科も同じように、ジェネラリストであることが求められる診療科であると思います。この地域医療研修で得られた経験を生かし、専門分野の垣根を越えて、また疾患のみならず患者の家族や生活までを考えた「患者を診る」医療を心がけていきたいと思います。
 日常の喧騒から離れ、ゆったりとした時間が流れる生月島で過ごした1ヶ月間はとても充実しており、普段は出来ない貴重な経験を数多くさせていただきました。美味しい魚や平戸牛をご馳走していただき、夜には満天の星空を見上げ、身も心もリフレッシュできた楽しい1ヶ月でした。最後になりますが、温かく迎えてくださいました生月病院の先生方、病院スタッフの皆様、そして生月島の皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。
清宮優香