金 甫妍 (地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立西神戸医療センター)
金 甫妍
地方独立行政法人 神戸市民病院機構 神戸市立西神戸医療センター
平成29年7月3日~平成29年7月14日
(医療法人医理会 柿添病院)

 柿添病院での研修で学んだ最も大事な事は、患者さんに対する医師としての姿勢です。
 外来で先生方の診察を見学し、如何に自分の身体診察がいい加減だったかを知りました。長年医師をされている院長先生の聴診の方が、医師に成り立ての研修医の自分より、ずっと丁寧である事に驚き、反省しました。そして先生方と患者さんとの信頼感。「畑仕事はこの頃どれくらいできてる?」、「息子さんの様子はどう?」などと、先生方が患者さんひとりひとりの生活について把握していて、患者さんが何を大切に思っているのか良く理解していらっしゃるのがわかりました。「地域では都会の大きな病院で受けられる最先端の医療を全て受けられる訳ではないけど、ずっと診てもらっていた病院で診てもらって、最期はここで迎えたい」と思っている患者さんがいるという事をお聞きして、確かに自分が患者の立場であっても、大事なのは最先端の医療を受ける事やいろんな専門の診療科の医師に診てもらう事ではなく、ずっとかかっていて自分の価値観を理解してくれている医師に診てもらい最期を迎えられる方がずっと幸せだと思います。
 また、「総合診療」に対するイメージも大きく変わりました。私が研修した大学病院での「総合診療」のイメージでは、例えば原因不明の脳炎の例だったり、多臓器不全をきたしている例だったりと、一言でいえば「ややこしい」患者に対し「より専門的な」診療をするような物と思っていました。しかし柿添病院に来て、「患者が困っていれば、診療科なんて関係なく全て診る。病気としてではなく人として診る」事が、本当の総合診療なのだと痛感しました。私の研修している病院では様々な診療科が揃っているため、柿添病院で研修をする前は「外科の先生方が主に働いていらっしゃるから、神経内科や呼吸器内科など、他の診療科の患者はどうしているのだろう」と思っていました。柿添病院では、脳梗塞の患者がいれば治療する、肺炎の患者がいれば治療する、診療科云々ではなくそこに病気の患者がいるから、患者そのものを診て治すという姿勢が強く感じられました。そして総合病院でしているような検査や手技を、できる事全てしようとされている姿勢に感動しました。血管内治療や肝臓の手術もされていて、本当になんでもされるのだなと驚き、内視鏡検査や腹部エコーをさせて頂きとても勉強になりました。
 初期研修にも慣れて漫然と日々を過ごしていたこの時期に、柿添病院で自分の医師としての姿勢を見直す事ができ、本当に良かったです。いつか柿添病院の先生方のように患者さんやコメディカルの皆さんから信頼される立派な医師になれるよう、精進して参りたいと思います。
金 甫妍