研修医レポート：片山素子｜ながさき県北地域医療教育コンソーシアム（あごねっと）

片山　素子　（地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立西神戸医療センター）

片山　素子
地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立西神戸医療センター平成29年7月18日～平成29年7月28日（医療法人医理会柿添病院）

　まず最初に、柿添病院で研修させていただく機会を頂きまして誠にありがとうございました。2週間という短い期間でしたが、最初に皆様にお会いした時、ここでの診療の仕方が分からず右往左往していると、すぐに声をかけて下さり教えてくださったので、分からない時にすぐにお尋ねできる空気がとてもありがたく、私としてはすぐに馴染めたかなと思っております。2週間が充実した研修となりました。
　これまでの研修で外来見学をしたことが無く、こちらで研修する前2週間は開業医の先生方の外来を見学してきましたが、雰囲気も、診療内容も異なったものでした。こちらでは本当に“科”の概念を超えて、外科も内科も含めて全身を診療されており、治療に至るまで一部を除いて一貫して柿添病院で行っていく、正に総合診療を診させていただきました。この平戸の地に長年貢献してきた地域の病院であって、患者さんも２～３世代に渡って診療してきているため信頼関係が目に見えるようでした。信頼関係構築のために先生方が患者さん一人一人の性格を感じとり、その方に合わせたトーンで診察することで、患者さんも多くを語ってくれるので変化が分かり早期発見、治療に繋がる、スキルというと少し目先のことのように聞こえてしまい、いい表現が見つからないのですが、“患者さんを診る”という点で一番重要なこと学ばせていただきました。つけかえも病院なのに、ほぼ毎日創部を確認し、西神戸では続きは皮膚科の開業医さんで処置をしてもらって1か月後外来でという形式でしたが、これが平戸での病院の在り方なのだと違いを感じたところでした。一言に“地域医療”と言っても医療機関数、人口分布、年齢、交通機関背景が其其で違うので“地域医療”の一言にはまとめられないものということを2つの地域医療を研修させていただき初めて認識しました。健診も経験がなかったのであたふたしてしまいましたが、途中からさせていただくのがとても面白くなりました。若い方も多く、特に乳がん検診は健診から始まり異常があればここで精密検査を行い、治療までを一貫してできるという点が柿添病院の強みではないかと感じました。
　度島での訪問リハビリでは患者さんの日常生活に沿ったリハビリを体験することができました。通院のリハビリも、もちろん患者さんに合わせたメニューで行っていますが、訪問のリハビリは本当に新鮮でした。病院で行っているようなリハビリを家でもするのかなと思っていましたが、今回同行させていただいた１例では“お盆のお墓参り”ができることを目標に、お墓参りの予行演習を行いまいした。ここの坂がきつい、足場が危ない等も一緒に確認しながら目標場所まで歩行練習を行い、帰宅後はその方が水分をきちんと取れているかどうかを確認するなど身体の使い方だけなく、実際の生活の場での目標を定めてどうしたら目標を達成できるかを模索していく訪問リハビリの重要さ、面白さを体感しました。リハビリ関係でもう一つ特徴的なトレーニングを中野診療所で見せて頂きました。マシーントレーニングで80代の高齢者の方々が次々と負荷がかかったマシーンを使ってトレーニングをされている姿に驚きました。最初に体力筋力評価を行って3か月後に再評価。ちょうど3か月後のAssessment の方がいらっしゃり、結果は“維持”でした。ご高齢であるので低下させないことが重要であり、最初の評価で一目で分かる数字での具体的な目標ができるため、毎週各々の今を維持していく、あるいは改善していくために、リハビリに積極的に取り組まれている患者さんやスタッフの姿を拝見し、リハビリの重要性も改めて実感しましたが、リハビリ科を今後専門とするのもいいなと感じました。ここでのリハビリは今まで見学してきたところと違って、強化合宿並みのハードで、皆さんの本気を肌で感じました。
　高齢社会を10年先取りしている平戸ですが、一つ大きく勘違いをしていました。研修をする前までは“在宅での看取り”が多いのかと思っていたのですが、高齢者が多いからこそ、在宅は老々介護を余儀なく課す状態を作り出すため、在宅での看取りはあまりいらっしゃらないと伺い、現在、国の政策としては在宅への移行を推進していますが、現状を考えると介護サービスを色々利用したとしてもなかなか厳しいものだと知りました。団塊の世代が後期高齢者になる2025年以降、支えていくのは私たちの世代であり、平戸の医療の在り方や、看取りについて問題は他人事ではなく、いずれやってくる風景を少し垣間見たと思っています。考えるきっかけを頂きました。
　今回の研修では他にも留置所の診察や、検案、シャント作成、ATL患者さんの診察等、初めてのことを沢山経験させて頂きました。一つ一つ感じることは沢山あり、どれも興味深かったです。
　お忙しい中、一つでも多く柿添病院での特徴ある研修を組んでくださりましてありがとうございました。方便にもふりまわされつつ、先生方、スタッフの皆さん、患者さんと楽しく交流、研修をさせていただくことができました。本当にありがとうございました。