柿添 麻由子 (長崎大学病院)
柿添 麻由子
長崎大学病院
令和元年9月30日~令和元年10月25日
(医療法人医理会 柿添病院)

 「平戸で医師として働き、笑顔で過ごすお手伝いをしたい」というのが、私が医師を志すようになった原点だったこともあり、この1ヶ月間は非常に充実した有意義な研修でした。大学に地域枠で入学させていただき、学生時から地域医療について学ぶ機会は多くあったものの、1ヶ月というまとまった期間を研修医ではあるものの一医師として実臨床の現場に入るのは初めてで自分が漠然と抱いていたイメージとは多少なりとも異なるものが多くあることを実感しました。
 まず”幅広く診る”ことに関しては、予想以上に広く深いことに驚きました。広さについては専門領域という横断的な広さだけでなく、予防や退院後の介入など時間的な広さも実感しました。1ヶ月で、手術や麻酔、腹部エコーや内視鏡検査、ESD、検案、ドクターヘリへの救急搬送、救急医療懇話会、保育所健診、5歳児健診、就学時健診、特定健診、乳がん健診、インフルエンザの予防接種、保健所研修、度島への訪問リハ、通所リハ、外来など、様々な経験をさせていただき、日々新しい学びの連続でした。受け持った入院患者さんは累計12名;腹膜炎により開腹手術、施設入所中の誤嚥性肺炎、胃潰瘍、臀部皮膚膿瘍、非代償性肝硬変、食道静脈瘤、腹腔鏡下胆嚢摘出術、膵頭部癌など、さらに複数のプロブレムをもっておられる方がほとんどで、周術期の管理や高齢者の感染症の管理、肝機能が悪い方の管理等、1つずつでも学んでいくことができたように感じます。外来では創部包交の知識や、高血圧や糖尿病、膠原病、神経疾患などの慢性管理の知識も広く知る必要性を感じました。検案では死後画像診断も行なっており、法医学的な知識も地域に貢献するために求められることがわかりました。先生方は本当に多忙な中でも疑問に優しく答えてくださり、積極的に勉強会を開催・参加しておられ、また専攻医の先生や大学から派遣される先生方もおられ、この1ヶ月間でできるようになったと少しばかり自信を持てるようになったものも多く、新しい知識や技術の補完が地域は遅れるというようなことも少ないように感じました。
 次に、”多職種連携の重要性”について、とても優れた連携が行われていると感じました。上述の”広さ”については看護師さんも同様で、内視鏡の補助、健診、包交、病棟管理、手術の機械だし、外回り、麻酔補助...ととても幅広く、特に手術では病棟の看護師さんも麻酔補助などで参加してくださるので患者さんにとってシームレスであり、気づいたことはすぐに医師に口頭でも伝えてくださるし、患者さんにかける言葉ひとつでも元気になるような明るい看護師さんばかりでした。OT・PT・STさんも術後リハや在宅、通所リハ、5歳児健診など幅広く、通所リハに来られる方は、送迎中には学校に行く時に友達と嬉しく話すようにおしゃべりされ、私も少しきついような体操を元気にこなし、「送迎に来てくださるからとてもありがたいのよ」「ここにくるのが毎週楽しみなの」と笑顔でお話しされているのが印象的でした。訪問でも同様でリハビリがお話しする場や憩いの場として浸透していることが、心身ともに健康寿命を伸ばしているように感じました。救急車で夜中にCTを撮りたいというときも駆けつけてくださる技師さんがおられて、院内に病棟の口腔ケアをしてくださる歯科医師さんがおられて、個々人にあった美味しいメニューを考えてくださる栄養士さんがおられて、退院後のことも考えてくださるMSWさんがおられて、非常に優秀な院内外の多職種が、活き活きと顔が見える関係のチームとして一緒に支えあっている、明るいエネルギーに満ちた環境であるように感じました。そのような環境で治療を受けて帰られる患者さんは、それは元気になるだろう!と、私も元気をもらいました。また、救急車を断らない方針で地域貢献しておられ、救急医療懇話会で救命士さんから現場の生の声をうかがえたり、健診や地域の養護の先生が集まって学校保健について情報共有する場にも参加させていただけたり、保健所で研修させていただけたりしたことで、地域医療の改善に立ち向かっているのは、医療職だけでなく地域の多職種も含めたチームであるということを実感できました。(個人的には健診を通してかわいらしい子供達に自分も癒され、懐かしい先生方とお会いできたのもとても幸せでした。)都市でなく少し小さなコミュニティだからこそ、face to faceの関係で構築される信頼関係のある多職種連携は大きな強みであると感じました。
 最後に、自分の実力不足を痛感し、一緒に研修させていただいた先生方や、優秀な院内外の皆さんに優しく元気に教えてもらってばかりの1ヶ月でしたが、お肉もお魚もお野菜も美味しく、朝焼けも夕焼けも星空も美しく、緑も青も街並みも深い、幼少期から育った平戸はやはり私にとってもパワースポットであり、将来的に平戸に帰ってきた時に少しでも恩返しできるように、今後もしっかり励んでいかねば!と力をいただきました。研修医オリエンテーションで、平戸で学ぶ研修医が多くいることに嬉しく感じていましたが、その所以がよくわかるような1ヶ月でした。
 ご指導いただきました多くの皆様に心から感謝の意を表します。誠にありがとうございました。
柿添麻由子