岩本 創哉 (社会福祉法人 恩賜財団 静岡県済生会 静岡済生会総合病院)
岩本 創哉
社会福祉法人 恩賜財団 静岡県済生会 静岡済生会総合病院
平成30年7月2日~平成30年7月27日
(平戸市立生月病院)

 博多駅から車を3時間ほど走らせてようやく辿り着いた生月島は、夕日を映す広大な海と豊かな自然に囲まれた美しい土地でした。夕飯を食べるところも見つけらないまま島内を走り回り、諦めてコンビニで豚骨味の即席麺を食し、生月病院に到着する頃には辺りはすっかり暗くなっていました。建物は私が想像したよりも大きく、誤って併設する特別養護老人ホームに侵入してしまいましたが、受付の方に優しく案内して頂き事なきを得ました。こうして初日から島の方の暖かさに触れ、私の地域研修が始まりました。

 生月病院にて過ごした1ヶ月は学びが多く、予想よりはるかに有意義なものでした。離島とはいえ約6000の島民の生活を担う病院、業務の幅は多岐に渡りました。見学や補助が主な立場ではありましたが、地域医療を担う皆様と業務を共にする中で、医療者として見習うべき姿勢が数多くありました。また患者様の多くを高齢者が占めており、高齢者医療という一つのテーマに関して、考えるきっかけとなりました。

 生月病院のスタッフは、スタイルの違いはあるものの、一人一人が幅広い知識を備えたジェネラリストであり、包括的な観点で島民の健康を支える全人的医療を実践されておりました。特に印象的だったのは外来診療でした。生月病院の外来受診者は多くが高齢者であり、複数の疾患を持ち、社会的支援も必要であったりとプロブレムが多岐に渡っている場合がほとんどでした。医学の発展は日進月歩ですが、全てのプロブレムを医学的に「治す」のは現実的に困難と思われました。生月病院の外来ではむしろ、そのような方々の生活に「寄り添う」という姿勢が強く感じられました。医学的要素のみでなく、目の前にいる患者がどのような人生を送ってきて、どのような暮らしをしていて、何を望んでいるのかを吟味した上で、両者が納得のいく治療が行われていました。個人のみならず地域の特性も理解し、一人一人の生活に密着することで実現できる医療の形があるのだと感じました。

 最後に、至らぬ所の多い私に一ヶ月間に渡って親切に指導して下さった病院、施設のスタッフの皆様に心より御礼申し上げます。
岩本創哉