池洲 諒 (東京大学医学部附属病院)
池洲 諒
東京大学医学部附属病院
平成30年3月6日~平成30年3月30日
(平戸市立生月病院)

 この度、長崎県生月島にある平戸市立生月病院で地域医療研修の機会を頂いた。それまで市中の急性期病院や大学病院でしか研修をしたことがなかった自分にとって、気づきの多い研修だった。
 まず第一に、生月島の高齢者の割合に驚いた。病院の待合は皆杖をついた高齢者ばかり。島の高齢者の割合は30%を超えるという。受診者が皆、生活習慣病を始めとしたmulti-problemを有していることはもちろん、訪問診療をした際には患者である高齢者を、配偶者もしくは子供(それでも60歳以上)が面倒をみる、という老々介護の構図もよく見かけた。医師を始め病院スタッフも皆年配の方であった。都市部の高齢化が新聞などで取り沙汰される今日だが、若年者が都市部に出ていってしまう地域の高齢化は、それを下支えする若年者の数が少ない点で都市部よりもsevereに感じた。
 次に、医療者の不足をひしひしと感じた。人口5,000人程度の生月島を支えているのは、わずか4人の常勤医師と40-50人程度の看護師を始めとしたスタッフである。限られた医療資源の中で、数多あるproblemには優先順位をつけて対応し、生月病院で対応しきれない症例は1時間程かけて島外の病院に救急搬送する。ささいなproblemはどうしても後手に回り、社会「保険」制度が機能しきれていないと感じた。すなわち、保険料を払っている住民は、その対価として必要時の医療を受けているというよりも、優先順位の高いproblemに対して限られた医療資源が「配給」されている、とう印象を受けた。
 限られた「島」の医療はあるものの、だからこその工夫も垣間見た。たとえば、患者の漁のスケジュールに合わせて外来予約を調整し、島民の医療アクセスの担保に努めていた。また、島民を対象に、予防医学の啓蒙を目的として生活習慣改善を謳った健康講座が開かれていた。
 生月で、近い将来の日本の医療を実体験できたような気がする。生月病院の先生や看護師さんを始めとした医療スタッフの方々はもちろん、温かく迎えてくださった生月島のみなさまに、このような貴重な機会を頂いたことに感謝の意を述べたい。
池洲 諒