一瀬 諒紀 (独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院)
一瀬 諒紀
独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院
平成30年9月3日~平成30年9月28日
(社会医療法人青洲会 青洲会病院)

 気づけば鈴虫の声が聞こえ、半袖では肌寒く感じる季節になりました。夏の暑さを感じながら始まった地域研修が早くも終わろうとしています。祖父母の家が長崎と大分で毎年のように帰省していたこともあり、実家に帰ったような懐かしさと安心感を覚えながら、私の地域研修は始まりました。
 平戸での医療は、今まで経験してきたものとは全く異なりました。まず何より人との関わり合いの深さに驚かされました。院内のスタッフは皆互いに顔見知りであり、快く相談や依頼を受け、密に連携が行われていました。医療者と患者間の関係においても信頼関係が構築されており、笑いが起きることもある温かい雰囲気に包まれていました。大病院や都会の病院になればなる程専門性は高くなり、各診療科や部門の敷居は高くなりがちですが、それは患者にとっては不利益でしかないということを再認識できました。
 地域医療という名の通り、地域全体の医療連携を学ぶ機会が多くありました。先程お話しした人間関係の深さというものは、院内だけでなく地域全体にもありました。日本は今世界トップの高齢化社会を突き進んでおり、病院だけでなく地域全体で高齢者医療を支えていく必要がある、という話は学生の頃に勉強しましたが、医師という立場で、実際に現場まで足を運び、現場の方々のお話を伺うことで、座学とは全く違うリアルな経験をすることができたと思います。病院から遠く通院が難しい方、普段は家で生活できるがデイケアが必要な方など、様々なニーズに対し地域全体で対応していく力が必要となってきているのだと感じました。また、そういったサービスで継続して高齢者を診ていくことで、新たな疾患の早期発見につながるとお話されていたことも、とても印象に残っています。平戸のような高齢化地域はある意味日本にとって最先端の医療を行っている、という先生のお言葉を、自分の目で確かめることができました。
 離島診療所での研修では、検査に頼らない問診・診察の重要性を再認識することができました。それは、専門にこだわり過ぎない、という考え方にも繋がりました。専門外だから診ない、というのではなく、専門外だけど話を聞いてみる、診察をしてみる、そうすることで新しい発見や学びあるだけでなく、患者との信頼関係も築かれていく。そんな医療として当たり前のようにも思えるけれどもついないがしろにされている部分にも、気付かされました。
 1ヶ月という短い期間でしたが、研修を受け入れてくださった青洲会病院関係者の皆様、また、福祉村や平戸地域の患者様、AGOnet関係者の方々、多くの方々のおかげで非常に充実した研修を送ることができました。この場をお借りして御礼を申し上げます。ありがとうございました。
一瀬諒紀