平中 孝明 (一般財団法人 神戸市地域医療振興財団 西神戸医療センター)
平中 孝明
一般財団法人 神戸市地域医療振興財団 西神戸医療センター
平成27年8月3日~平成27年8月14日
(医療法人医理会 柿添病院)

 普段は神戸という都会の場所で研修をしていたため、地域医療に対するイメージが持てていませんでした。そんな中、研修病院の地域医療プログラムで2015年8月から2週間、長崎県平戸市にある柿添病院にて研修させて頂く事になりました。
 平戸市には医療機関が限られており、また医師の数も30人程度であることから、平戸市3万人の人口に対応するには医師一人当たりの負担が大きくなってきます。そのためこの地域で働く医師には専門的な知識に加えて総合的な臨床能力が必要になってくると思われました。柿添病院の診療部長は日常外来で血圧や血糖コントロールなど内科的治療も行いながら、内視鏡カメラや腹腔鏡手術、開腹手術をも自ら執刀されており、幅広い医療技術を兼ね備えた素晴らしい先生でした。
また地域に密着した医療を提供しており、医者と患者間での信頼関係が非常に強く、お互いに良い関係性を築けているように思われました。神戸などの都会では医療資源が充実しており、患者さんも自由に受診する施設を選択できる環境にいます。しかし、平戸市では受診できる医療施設が限られているために患者さんは医者を信頼して受診され、そこで医者も十分な誠意をもって対応するため良好な医者と患者関係が形成されるのだと感じました。
 柿添病院では、看護師をはじめ医療スタッフの方々一人一人が廊下ですれ違うたびに明るく挨拶をされるため、非常に心地良く研修生活を送る事が出来ました。また不慣れな環境の中でパソコンの使い方や、物品の場所が分からず困っている時にも親切に教えてくださったり、時には冗談をいって談笑したりと、すぐに環境になじむ事が出来ました。
 病棟ではcommonな疾患を数多く経験させて頂きました。当直で自分が対応した患者さんが入院になった時には自分が担当医になり退院までの一連の流れを学ぶ事が出来ました。外来見学では、院長の外来を見学させて頂きましたが、患者さんに接する姿勢や、聴診などで必ず患者さんに触れて診察する事の重要性を学ぶ事が出来ました。
 内視鏡実習では実際にあまり普段は体験する事が出来ない、胃カメラをさせていただき、また外科の手術には助手として2例担当させていただき、診療部長の指導の元、様々な外科的手技を勉強させていただきました。
 中野診療所で実際に訪問診療する現場も見学できたことも大きな経験となりました。平戸市は医療施設が北部の方に集約しているため中部、南部で暮らしている人の中には簡単に医療を受けられる環境にいない方がおられます。そういった人にも安心して医療を受けて頂けるような訪問診療のシステムが必要不可欠になってくると思われました。また訪問診療を行う施設の数がまだ十分でないため、中野診療所の管轄エリアが平戸市全域であることを聞き衝撃を受けました。平戸という小さな市であっても北部から南部まで車で1時間かかるために、管轄エリアを分配できるような、診療所の点在化、および医療資源の充実が必要になってくるのではないかと思われました。
 また休日には他病院を研修している研修医達とビーチまでシュノーケリングをしに出かけたり、平戸の新鮮な魚を使った海鮮丼を食べたりして満喫する事が出来ました。また同時期に柿添病院で研修している同期の研修医や九州大学の第二外科の先生と仲良くしていただきました。自分の働いている病院と他病院の状況の違いなども知る事が出来、見識を広める事が出来ました。
 最後に、2週間お世話になった柿添病院の先生方、およびスタッフの方々に深く感謝の意を示したいと思います。この地域医療で学んだ経験を今後に生かしていきたいと思います。そして将来一人前の医師になった時に、こういった地域に医療を提供し、貢献できればと思います。ありがとうございました。
平中孝明