枝廣 太郎 (社会福祉法人 恩賜財団済生会支部 静岡県済生会 静岡済生会総合病院)
枝廣 太郎
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部 静岡県済生会 静岡済生会総合病院
平成28年8月1日~平成28年8月26日
(社会医療法人青洲会 青洲会病院)

 2016年8月1日から4週間地域医療研修として、青洲会病院で研修させていただきました。青洲会病院では、急性期から慢性期、回復期のさまざまな疾患の、さまざまな患者に対して医療を提供しており、先生方も自身の専門科に関係なく治療されていました。患者層としては、平戸周辺の方から、遠くの大島、度島からフェリーに乗って来られる方もおられ、それぞれの患者のニーズに合わせた、この病院で行うことのできる可能な限りの医療を行っていました。

 地域医療の実習で、市中病院では経験することができないことは、特に訪問診療、看護、リハビリであり、一緒に診療や見学をさせていただきました。対象は高齢者から、慢性神経疾患、末期がんの方まで様々であり、実際に要介護5の方や末期がんの方が自宅で生活している様子を見たのは初めてであり、とても印象に残りました。これは地域の問題で施設に入れないのではなく、患者の希望に沿ってのことでした。患者を中心とした医療、家族のサポートの連携の重要性を認識することができました。

 青洲会病院内では、末期がんの患者さんを担当医の先生と一緒に診させていただきましたが、私の頭の中で、いかに患者さんの訴えに対応し、1日1日を不快なく過ごすことができるだろうか、ということを考える日々でした。どうしても対応に限りがありますが、思い付く限りのことを担当医に提案し、実際に行ってみると少し効果もあり、患者さんにも喜ばれたりしたことは、非常に研修医冥利につきました。担当医の先生から「医療に答えはないから、なんでもやってみましょう」、と言われたことがとても心に残っており、がんの末期だからどうしようもない、我慢するしかない、と諦めるのではなく、何か一つでも考えることが非常に大切なのではないかと感じました。

 よく聞くことですが「地域の医療は都市部の医療と比較すると劣っているのか」、という 疑問がありますが、実際平戸に来て、この青洲会病院での実習ではそこまでは感じることはありませんでした、青洲会病院は清潔感もあり、血液検査、超音波、内視鏡検査、 CT、MRI等も揃っており、設備としては大きな問題はないと感じました。しかし医療は常に進歩するため、知識をup date していかないと、地域の医療が都市部の医療から遅れてしまう可能性はありえると思いました。青洲会病院で勤務する医師は要職を歴任したのちに勤務をされている医師も多く、本当に最先端の薬の知識などを常にup date していくことは非常に大変なのではないかと感じました。また、自分の専門分野の患者だけを見るわけにもいかないので、幅広い知識の勉強も必要です。要するに、地域の医療を行うにあたり、個人の能力が問われる部分が非常に大きいのではないか、と感じました、加えてその地域の患者が納得する医療を提供することが大事であり、特に訪問診療・看護、離島への往診等はその良い例で、患者もご高齢の方が多い為、人生経験が豊富な医師が行うことは非常に理にかなっています。高齢化の進んだ日本で地域の医療を守る診療を行っていることは、日本の医療の最先端の内容を経験させてもらえたのではないかと考えています。地域医療実習を通じて、研修医を終了してすぐに地域で働けるかというと、一度しっかり自分の専門分野を確立して勉強した後でないと地域に必要な医療を提供するのは難しいのではないかと思います。しかし、経験を積んだ後には、地域で働くことにも興味が湧きました。

 最後になりましたが、突然の研修にも関わらず優しく受け入れて下さった植田先生、常光院長先生を始め、青洲会病院のスタッフの皆様のおかげで充実した地域研修を過ごすことができました、改めてこの場をお借りして感謝申し上げます。
枝廣太郎