茨田 晨介 (独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院)
茨田 晨介
独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院
令和2年7月6日~令和2年7月31日
(社会医療法人青洲会 青洲会病院)

 青洲会病院で研修させていただいてからはや1ヶ月が経とうとしています。長崎空港から3時間ほどバスを乗り継ぎ、はじめて平戸瀬戸市場前に降り立ったときにはひどい土砂降りでしたが九州地方では梅雨が明け、昨日までの悪天候が嘘のように晴れ渡る中少し名残惜しい気持ちでこのレポートを綴っています。
 青洲会病院研修を通して感じたことは病院職員と患者さんとの距離感の近さです。青洲会病院では整形外科外来を見学させていただく機会を多くいただきましたが、先生は一人ひとりの患者さんの診察に時間を割いていました。私の普段研修している病院では患者さんが多いこともあり、必要な情報を抜き出し検査をし、外来をとにかく回すといった診療をしています。そのスタイルでそれに慣れている私にとって、直接的には診療に関わらないような世間話や患者さんを茶化すような冗談を交えながら診療に当たる先生の姿はとても新鮮に感じました。診療に来られた患者さんの息子の話題について看護師さんと患者さんが花を咲かせている光景も都会の病院ではなかなか見たことのない光景でしたが看護師や医師と患者さんとの信頼関係は強く築かれ、ささいなことも患者さんが診察中に質問されたり相談されたりしていました。
 在宅ケアセンター「スマイル」のケアマネージャーさんとともに患者さんのお宅に伺わせていただく機会もありましたがその際にもマネージャーさんが事務的な話はほんの少しであとはほとんど近況などの世間話をしており、患者さんにとってケアマネージャーさんは「近所のおばちゃん」といったものに近い存在となっていました。平戸の市街地からは離れた地域に一人で住まれている方も多く、そのような方々にとってはケアマネージャーさんが数少ない話し相手となっており地域医療における訪問職員の職業を超えた大切な役割について身を持って感じました。
 また様々な患者さんのお宅を訪問していく中で感じたのは医療へのアクセスの困難さです。公共交通機関の発達している都会とは異なり、バスを待つのに何時間もかかることも珍しくはありません。車が運転できるような方なら問題は少ないかもしれませんが、足腰が不自由ながら家で過ごされている患者さんにとって訪問医療はやはりなくてはならないものであり、患者さんを見るにあたっての医師や看護師、理学療法士、ケアマネージャー等多職種の連携は重要性を感じました。
 今回の研修の中では「スマイル」の他にも訪問リハビリテーションや透析施設見学、検査科、薬剤課、保健所研修などでの研修など医師以外の方と関わる機会も多くいただきました。薬剤課での病棟へ注射薬を下ろす作業や錠剤をピッキングする作業は普段の仕事の裏側を覗けたようでとても新鮮でした。また改めて普段の患者さんの治療における急性期病院での私達医師の処置は患者さんに行われる全医療行為のほんの一部分でしかないのだということを改めて自覚しました。
 約一ヶ月間地域医療を研修させていただいた中で地域に根づく医療とはどういうものかを学ぶことができ、急性期を過ぎた患者さんがどういった経路をたどるのか、中長期的に患者さんを診ていくことはどういうことなのかということは今後の自分の医師としてのキャリア、考えかたに生かしていく所存です。
 最後になりますがコロナウイルスが全国で蔓延している不安定な社会情勢の中、私を快く受け入れてくださった青洲会病院とながさき県北地域医療教育コンソーシアムの皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。約一ヶ月間大変お世話になりました。
茨田晨介