安藤 克敏 (東京大学医学部附属病院)
安藤 克敏
東京大学医学部附属病院
平成29年3月6日~平成29年3月30日
(医療法人医理会 柿添病院)

 1ヵ月間、柿添病院での研修をさせて頂き、ありがとうございました。これまで九州に住んだことがなく、自然環境や方言、地域性が全く違う中での研修になりました。始めは方言の違いで患者さんとの会話で難渋することが多くありましたが、研修の最後には何となく言葉に慣れてきた気がします。柿添病院の立地条件はよく、商店街の中に建てられています。周りには飲食店があるため何回か食事させて頂きました。特に焼き鳥の「ごっとり」で食べた裏メニューの味は忘れられません。平戸に来た方には是非ともお勧めしたい一品となりました。また、研修プログラムも充実しており、1週間に様々なことが経験できるようにセッティングして頂いていました。例えば、訪問リハビリテーションや保健所研修、エピペン講習会、検視などです。どれもこれまで経験したことがないことばかりでした。ここで特に印象に残ったことを2つ記載させて頂きたいと思います。
 まず1つ目は訪問リハビリテーションで感じたことです。通所が困難な方々に対し訪問してリハビリを行う訳ですが、通所困難な理由に島からフェリーに乗ってくることが挙げられます。都心部で社会的事情を考慮する際に交通機関に船の話題が挙がらないため、新たな見解を勉強することが出来ました。そのような方々とは、お会いする機会が少ないため、一回一回の訪問での診察やコミュニケーションが大切であることも再認識させられました。数少ない訪問でどれだけObjectiveデータを挙げて、問題を見つけてPlanを建てることが出来るかが大切であると感じました。そのためには、まず傾聴することが重要であり、コミュニケーション能力が問われます。都心での診療でも必要不可欠と分かっていながらもマスクされてしまう部分であり、常日頃から意識して診療をしていかなければならないと感じました。医師としての原点を見つめ直す素晴らしい機会となりました。また、診療とは関係ないですが、訪問すると多くの方がお茶やケーキを出して下さったりと人の温かさを感じることも出来ました。次の職場でも人間性を大切にしていきたいと思います。
 2つ目は保健所研修が印象に残っています。保健所の所長は県北保健所だけではなく、他の島の保健所も兼任しているということでした。文京区役所で保健所研修をさせて頂いたことがあり、そこでは考えられないことでした。文京保健所では、大まかに精神、感染症、食品衛生の分野を管理していました。しかし、平戸での研修では狂犬病予防や動物愛護管理対策を力に入れて保健所業務を行っていました。これは地域性によるものと考えています。飼えなくなった犬や猫の引き取りなどを行い、住民からの相談に対応していました。また、温泉が沸くためレジオネラ菌を常に念頭において業務をこなさなければなりません。レジオネラはアメーバを宿主としているため浴槽のような湿潤環境に増殖しやすいと言われています。何も治療しなければ肺炎になると7日間程度で死に至る疾患であり、早急の対応が必要と考えます。さらに地域では高齢者が多いため、より予防対策が必要なものとなっています。都心の保健所でも対策はしているものの、ここまで力を入れては行ってないように感じました。地域によって、感染症対策から取り扱う分野が全く違って大変勉強になりました。
 普段の診療でも大学病院では経験できないようなこと多くやらせて頂きました。例えばGFや救急搬送の付き添いなどです。患者が搬送中に急変した場合のアルゴリズムも自身の中で整理することが出来ましたし、救急車の中の資源に限りがある中でどこまで急変治療を行うのかなどを学ぶことが出来ました。これは今後、医師として働く上で重要な経験となったと思います。仕事ばかりでなく、休日には観光もさせて頂きました。生月島に行き大バエ灯台を登ることが出来ました。そこからの眺めは絶景で思わず写真を何枚も撮ってしまいました。また、平戸の漁師食堂「母々の手」でお刺身も食べることが出来ました。2200円で新鮮なお刺身が食べ放題であり、それ以外にも野菜やご飯、味噌汁がお代わり自由でかつ、値段も安くて美味しく、楽しい時間を過ごすことが出来ました。食堂での周りの方々との会話も楽しく、普段東京では外食中にたわいもない会話を他人とすることはまずないので、ここでも人の温もりを感じました。住民同士がお互い信頼し合っていることが感じ取れました。
 東京では感じることが出来ない経験をすることが出来て、この1ヶ月とても有意義な時間を過ごすことが出来ました。地域で過ごした経験はないため、始めは不安ばかりでしたが、様々な方からのサポートにより何とか1ヶ月過ごすことが出来ました。最後になりましたが、指導して頂いた先生方をはじめ、病院のスタッフの方々に感謝申し上げたいと思います。この度は本当にありがとうございました。

安藤克敏① 安藤克敏②
安藤克敏