甘利 達明 (東京大学医学部附属病院)
甘利 達明
東京大学医学部附属病院
平成28年7月1日~平成28年7月27日
(医療法人医理会 柿添病院)

 私が今回の研修で最初に思ったことは、遠い、ということでした。平戸につくまで空港のある都市から3~4時間かけてバスを乗り継いでいき、中核都市の佐世保からでも一時間半かかる地理的条件に、心筋梗塞で緊急カテーテル検査が必要な人がいたらどうするのか、その他緊急に高度な処置が必要になったら?と不安を感じました。私の地元は長野県で山が深いため、緊急性のある場合は山奥の村の患者でもドクターヘリで30分以内に総合病院へ搬送できるシステムが整っており、そういったシステムになっているのかなぁ、と思っておりました。
 こちらへ到着し研修を始めてからは、柿添に限らずどこの病院でもレントゲンは当然としてCT、果てはMRIまでしっかり揃っていることに驚き、大抵のことは自己完結できる設備・人があることがわかりました。こちらでは大島や度島など診療所があるだけの離島も数多くあり、そちらからの緊急性のある患者の受け皿として機能しなくてはならない、ということも感じました。
 またこちらにきて感じたのが、高齢者の方が非常に元気だということです。東京では70代でもADLが悪く、ヘルパーがいなければ生活できないレベルの方が多数いましたが、こちらでは90代でも非常に元気でなんと手術を受けており、僕の中での常識が覆りました。研修最後には僕自身も、次の手術患者さんは71歳か、なんて若いんだろうなどと考えておりました。大島などで膝・腰が悪くどうしても一人で生活できない方でも、商店の方が物資を運んだり、隣近所の方が常に様子を見てくれている仕組みになっており、昔の日本で存在した地域のセーフティネットが、こちらではまだまだしっかり機能しているんだな、と感じました。
 研修内容とは若干ズレますが、休日の際生月などの景勝地に観光に行ったのですが、昔行った知床半島を思い出すような雄大な断崖絶壁や、農免農道をずっと進んでいった先にあるサンセットロードから見た水平線に沈む夕日は、思わず写真を何十枚も撮ってしまいたくなるほど素晴らしいものでした。往復の道乗りでは牛が放し飼いになって道路をわが物顔で歩行していたり、おばあちゃんが道に腰かけて休憩している姿が多く見受けられるなど、今は本の中と私の地元だけしかないと思っていた日本の原風景がありました。
 感想文の最後のまとめをさせていただくなら、至らぬ点ばかりであった私を優しく指導してくださった柿添病院の先生方、看護師さん、理学療法士、作業療法士さんたち、その他多職種の方に今回の研修は大変お世話になりましたので、感謝の気持ちをここに記しまして結びとさせていただきます。
甘利達明