明石 一浩 (社会福祉法人 恩賜財団済生会支部 静岡県済生会 静岡済生会総合病院)
明石 一浩
社会福祉法人 恩賜財団済生会支部 静岡県済生会 静岡済生会総合病院
平成29年2月6日~平成29年3月3日
(医療法人医理会 柿添病院)

 柿添病院での約1か月間、自分の病院では学べないことを非常に沢山経験し、学ばせていただきました。平戸の地は静岡からとても遠く、重い荷物を持ち、期待と不安に胸を膨らませながら丸一日かけてやっとたどり着きました。19時前にも関わらず多くの店が閉まっており、街が静寂に包まれていたことには驚きましたが、三郎先生が病院で迎えてくださり、安心いたしました。
 翌日からの研修では、平戸の地域特有と思われる面を多く目にしました。高齢者が30%以上と多く、また離島からの患者も来ます。遠方から来る人や独居が厳しい人に対しては、軽症であろうと疾患だけから判断せず、その人の生活環境まで考えて入院適応や治療を考えるという点は、静岡市の総合病院にはない考え方でした。外来や病棟では、高齢で病状が安定している人が多く、患者さんとのコミュニケーションがより重要な意味を持つ、という事を経験しました。由美子先生には健診の結果報告時の話し方、説明の仕方について指導を受け、普段の自分を見直す機会にもなり、大変勉強になりました。内視鏡やカテ交換、気管挿管や手術の助手など手技についても多くの機会を与えていただき、経験できました。
 コメディカルの方はすぐに名前を憶えてくださり、院内の一員として扱っていただいたので、連絡もスムーズで必要な事もすぐに聞くことが出来ました。非常にアットホームな空気であったと感じています。
 院外実習では色々な経験の機会を下さり、退屈することがなく刺激的な毎日でした。中野診療所や毎快研修はデイサービスの実際を知ることが出来、また自分自身もリハビリに参加し、いい運動になりました。特に毎快のウォーターベッドは非常にリラックスでき、印象的でした。訪問診療や度島リハ訪問も時間の流れがゆっくりであり、訪問先の方々の温かさに触れ、逆に訪問している側のこちらが心のゆとりを取り戻すような気持でした。同時に、春日地区の奥に高齢の家族のみで住んでいたり、本土との移動も一苦労である度島の生活を知って、非常に生活には不便な環境であると感じました。今はまだ人口も減少しているとはいえ一定の人数がおり、周囲のサポートがあります。しかしこの先日本の人口がどんどん減少し、また若者が都市部に集中していけば、この現状にもひずみが生じてきて離島での生活は困難になっていくのではないでしょうか。また、高齢者のみで交通手段も限られる中、急変があった場合はどのように搬送し、救命すればいいのでしょうか。長閑で心安らぐ環境であることを感じると同時に、不安定で、ある意味危険ともいえる場所なのではないかとも感じました。日本はこの先急激なスピードで状況が変化していくと考えられますが、その中で誰もが安心して安全に暮らすためにはどうすればいいのか、という事を考えさせられる体験でした。へき地医療の医師不足がしばしば問題に挙げられる昨今ですが、医者は大学からの短期派遣のように、任期制であれば確保は可能だと思いますし、そのような体制が地域医療では増えていくのではないかと思います。診断や治療方針の決定を行うのは医師ですが、このような地域の患者の健康状態を把握したり異常を拾い上げるのは看護師やリハの方など、コメディカルの方の役割の大きさを感じました。今後はコメディカルの人員確保も地域医療にとってより重要な問題となってくるのではないかと思います。
 一方で、外から来た人間である自分にとって、平戸という場所はとても魅力的でした。鮃、牡蠣などの海の幸、平戸牛、牛蒡餅など、美味しい食べ物がたくさんあり、毎日楽しみでした。甘党の自分はカスドースも大変気に入りました。教会や昆虫自然園、平戸城、寺社など見所も多くあり、また時には佐世保や福岡、長崎まで足を延ばして、オフの時は平戸での生活を満喫しました。図書館で勉強していたら隣のおばさんがなぜかココアを奢ってくれて仲良くなったりと、都会にはない心温まる経験もできました。雨で野焼きが延期となり、見ることが出来なかったのが唯一の心残りです。
 今回、医学的な勉強よりも、地域医療の現状を学んで来よう、という目標を立てて平戸に参りました。病院での治療方針や手術等については、細かな方式の違いこそあれ、大きな差はなかったように感じます。しかし患者さんとの距離が近く、治療も然ることながら日々の健康・生活についても診ていく点は地域医療ならではであると感じました。
 1か月という短い期間ではありましたが、病院の方々に快く迎えていただき、見知らぬ土地でも毎日ストレスなく過ごし、楽しく学ぶことが出来ました。毎日忙しく、厳しく、という実習ではありませんでしたが、地域医療ならではの経験を多くすることができ、一方で平戸も楽しむことができ、メリハリのあるいい実習だっだのではないかと思っております。将来どのような道に進むかはまだ決まっておりませんが、ここで得た経験を忘れることなく、広い視野を持って医師として成長して参りたいと思います。1か月間誠に有難うございました。
明石一浩